メタゲーム
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メタゲーム(Metagame)は、マジックのゲームにおける駆け引き要素の1つ。
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解説
大会では何人もの対戦相手と戦うことになる。この場合、「どんなデッキ相手でもそこそこに戦えるよう構築したデッキ」も悪くはないが、それ以上に「大会で多く使用されているデッキ相手に有利となるよう構築したデッキ」の方が勝率を上げやすい。そういったことを考え、勝率が高くなるようにデッキ(サイドボードを含む)を構築することが「メタゲーム」である。略して「メタ」とも言われる。
たとえば、赤以外には強いが赤には弱いデッキが、赤の防御円/Circle of Protection: Redをいれて赤ともそこそこ戦えるようにしたとする。この選択は、対戦相手の使用するデッキが予測できない場合には一応合理性はある。しかし、そもそも大会参加者の中に赤デッキを使用している人がいないことが予測できるなら、赤の防御円は全くの無駄カードになってしまうので、これを抜いてより有効なカードに差し替えるほうが効果的である。逆に、赤が多数を占めると予測出来るなら、元から赤に強いデッキを使う、またはそのデッキに赤の防御円を投入する方がより高い戦果をあげられる可能性が高い。
- たとえば、青いデッキが多い環境の場合は島渡りを活用できるフィッシュが有効な選択肢になる。また高速コンボデッキが多い環境なら、ビートダウンデッキにその対策を施すより、カウンターを満載したパーミッションなどを選択する方が効果的なことが多いだろう。
一方、赤の割合は少ないが、数回は対戦相手となることが予測できる場合、最初の選択はその大会において最も効果的といえ、メタに合致していると言いやすいだろう。
メタゲームはプレイングと同等、あるいはそれ以上に重要である。デッキパワーが低いデッキでも、それがメタに合致していればそのトーナメントで優勝を果たせることもあるし、逆にデッキパワーが高くともメタられればトーナメントの上位に残れないこともある。ネクロ全盛の世界選手権96(通称ネクロの夏)に、ネクロに強い白ウィニー「12Knights」を使ったTom Chanphengが優勝したことや、日本選手権01における一大勢力であったブルーオーブがベスト8にも入れなかったことはその顕著な例といえる。
また、環境が、極端に強くアンチデッキすら存在しないデッキ一種で占められていたとしても、そのデッキ同士のミラーマッチという形でメタゲームは存在する。「MoMaの冬」たるThe Finals98で、小宮忠義は赤マナを散らして紅蓮破/Pyroblastや火の玉/Fireballを入れるのみならず、サイドボードに解呪/Disenchantやヨーグモスの意志/Yawgmoth's Willまで投入した「対MoMa用MoMa」を使用した。結果、MoMa一色の大会において小宮は優勝を遂げる。
- メタゲームは主にトーナメントで用いられる用語であるが、カジュアルプレイにおいてもメタという概念がないわけではない。たとえば周囲にクリーチャー主体のデッキが少ないから、クリーチャー除去を少なくしておくということも立派なメタである。もっとも、身内における過度なメタは対人メタに等しく、嫌われる要因となるので注意。
- 接頭辞 meta- は「高次の」「変化した」といった意味。プレイングなどが盤上における仮想世界での駆引き(ゲーム)なら、メタゲームは盤上に立つ前、(仮想世界より高次な)現実世界で行われる駆引きといえる。もっともMTGにおいては単に「仮想敵」とか「周りや世間で流行っているデッキ」、「それらに勝てるようなデッキ構築」という意味でも使われる。
メタの変遷
メタゲームは「流行」に左右される要素が大きいために、時期によって「主流メタ」がぐるぐる入れ替わることも珍しくない。メタゲームが入れ替わった結果、場合によっては再び似たような状況に戻ってくることもある。俗に「メタが一周する」「メタが一巡する」という。この循環はしばしば「食物連鎖」や「適者生存の法則」に例えられる。
メタが一巡した具体例を挙げる。
例1
- 「リシャーダの港/Rishadan Portが流行する」
- 「リシャーダの港への対策カードを入れるのが流行する」
- 「相手の対策カードを無駄にさせるため、リシャーダの港を使わないデッキが流行する」
- 「リシャーダの港に対策しない人が増える」
- 「対策カードが環境にないので、リシャーダの港入りデッキが再び流行する」(最初に戻る)
以上のリシャーダの港を巡るメタの変遷は、The Finals00(2000年12月)から日本選手権01(2001年6月)の間に起こったものである。Finals00の時点ではTOP8のうち、リシャーダの港を使用したデッキはノーファイアーただ一つであり、逆に約半数のデッキが対策カードサーボの網/Tsabo's Webを使用していた。しかし日本選手権01でのTOP8のデッキのうち、サーボの網を使用したデッキはネザーゴーとタッチ緑のスクエア・ヴォイドだけであり、残り全てのデッキ(ファイアーズやマシーンヘッドなど)がリシャーダの港を投入していた。
例2
- 「パララクス補充が流行。あまりにも強いため、それ以外のデッキが駆逐される」
- 「パララクス補充に強いトリニティが開発され、環境を支配しはじめる」
- パララクス補充は、キーカードのほとんどが4マナ。トリニティはそれが揃う前にマナ加速からすき込み/Plow Underを打てるため優位に立てた。すき込みを序盤に打てる点は、パララクス補充に対してのみならず、当時の環境に大きく有効だった。
- 「アンチ・トリニティデッキとしてアングリーハーミットが台頭する」
- 「増えたアングリーハーミットに有利なアングリーノンハーミットが台頭」
- 「アングリーノンハーミットを食えるパララクス補充が復権」(最初に戻る)
以上がパララクス補充からアングリーハーミットを巡るメタの変遷である。ただしこのメタが一周した時点で開催された世界選手権00では、「補充もアングリーハーミットも食える」デッキとして登場したティンカー(スーサイドブラウン)が登場したという点で一週する前とは決定的な違いがあり、このデッキは圧倒的な強さを見せつけて世界チャンピオンに輝いた(詳細はスーサイドブラウンの項を参照)。このようにメタが一周したといっても一週前と完全に一致しているとは限らず、一週した過程を教訓に新たな「第三勢力」が登場して猛威を振るうこともある。
- 余談ではあるが、パララクス補充自身は、ミラーマッチ対策としてサイドボードに時間の名人/Temporal Adeptを投入することで、パララクス補充をメタっていた。デッキの構造上3マナ以下でクリーチャーを除去できないために、延々と毎ターン土地を戻し続けて4マナ揃えられなくするという、パララスク補充相手でしか成立しない「完全ロック」が存在したからである。
例3
- 「Force of Willや目くらまし/Dazeを使った青系クロック・パーミッションが流行る」
- 「クリーチャーの質とライフを削る速度で勝るZoo・ジャンド系がそれを駆逐する」
- 「環境からカウンターが減ったため、ストームやCharbelcherなどの高速コンボデッキが成功しやすくなる」
- 「いつでもキーカードを打ち消せるためコンボデッキに強い青系デッキが再び流行する」
レガシーで常時起きているメタの一巡。新カードの参入によって主流デッキが移り変わるものの、この三すくみの構造は長年変わっていない。